焙煎ってなに?コーヒー専門店ロースターが焙煎について語ってみた

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天白 隆洋
◆この記事を書いた人◆
珈琲焙煎士 天白隆洋 (喫茶イレブン・オーナー)
〒630-0244 奈良県生駒市東松ヶ丘2-14-101
TEL/FAX:0743-89-1003
Facebook:https://www.facebook.com/elevencoffee
Blog:http://ameblo.jp/coffeeroaster
焙煎豆の卸売 ご相談随時承っております
みなさんが普段カフェや喫茶店、コーヒー豆屋さんで見かける茶褐色、いわゆるコーヒー色をした豆。

一般消費者の方々のほとんどは、そのコーヒー豆が元々からその色をしているわけではないことをご存じでは無いかもしれません。

そう、コーヒー豆は「焙煎」つまりポップコーンやゴマを火にかけて煎る事に似た「煎る」という行程を経て、やっとあのコーヒー色になるのです。

そしてその「焙煎」という作業だけに特化し、仕事をしているのが私たち自家焙煎店の「珈琲焙煎士(ロースター)」と呼ばれる人間です。

ただただ「豆を煎る」という作業に強いこだわりを持ち、あらゆる焙煎技術を各々に突き詰めて磨いていく仕事・・・その単純な作業の中にある永遠ともいえる奥深い世界。

答えのない迷路を歩き続ける焙煎士たちの仕事を、簡単にご紹介します!

 

生豆を焙煎して、美味しいコーヒーへ

そもそもコーヒー豆というものは、お店で見かける豆の形で木になっているわけではありません。

ご来店になるお客様の多くの方が、コーヒー豆はそのままの状態で木の枝になっていると思いこんでおられたりします。

それもそのはず、「コーヒーの木の実」を見掛けることがそもそもこの世の中ではすごく少ない。

私たちが焙煎をしているのは、その木の実の中にある「種=豆」なのです。

コーヒー生産国でコーヒー栽培に携わる方々は、そのさくらんぼに似たコーヒーの木の実(コーヒーチェリーと呼ばれます)を収穫、その後、乾燥・脱穀や精製を経て「生豆」として輸出されます。

そしてその生豆を商社を通じて私たち焙煎業者が仕入れ焙煎し、やっとよく見るコーヒーになります。

 

コーヒーにどうして焙煎が必要か

なぜ焙煎という工程を経て口に入れる飲み物になったのでしょうか?

これには諸説あり、確かな情報というものがありません。

有名な話しとしては、かの昔イスラムの僧たちが生豆を煎じて飲むことで夜通し祈りを捧げる眠気覚ましにしていたというような歴史もあります。

僧たちが何かの拍子に豆を焦がしてしまった所、実に良い香りがして・・といういかにも偶然の産物という書かれ方をしている事も。

真相がどうだったという表記をされている文献を見た事はないですが、眠気覚ましという意味では生豆に含まれるカフェイン含量が最も高く、焙煎度が進むごとにカフェイン量は減少します。

その他焙煎によりコーヒー豆に含まれる沢山の成分は増減するのですが、とりわけ一般消費者の皆さんが気になるのはカフェインと、コーヒーの成分の中でも「抗酸化作用」をもつ「クロロゲン酸(ポリフェノールの一種と言った方が解りやすいですね)」かと思います。

ただしこのクロロゲン酸も、焙煎が深くなるほどに含有量は減っていきます。

主たる著名な成分である二つは、生豆や浅煎りの方がより多く残存し、深煎りになるほどに減少します。

ただしこれが「おいしいかおいしくないか」をはかるものでは決してないという事を頭に置いておいてください。

 

味わいに関する要素は、成分変化以上に焙煎という作業の中で行う、人為的な「味創りという操作」に多くが起因します。

皆さんが飲まれるコーヒーが、なぜ甘いのか・苦いのか、なぜ香りが強いのか・弱いのか、なぜ爽やかなのか、なぜキレがよいのか、、等々

それらすべては「焙煎」という作業で私たち焙煎士が、豆の持つ魅力・味わいを選択的に引き出した結果(こだわりや狙いを表現したもの)なのです。

 

焙煎はただの「焦がす」作業ではなく、生豆を焦がしながらあらゆる豆の「味の引き出し」から自分のこだわりに近い味を選び出し、表現することではないかと思います。

ですので焙煎という作業に「正解」も「間違い」もなく、各々の焼きたい焼き方、出したい味、ねらいが違う以上は「皆違うし、皆正解」が適切な言葉でしょう。

各々の焙煎士たちが創る「自分の味」と消費者の皆さんが思う「おいしいのカタチ」が重なったとき、そこには感動や幸せな気持ちがうまれるはずですよね。

 

コーヒー焙煎機の種類もいろいろ

前置きがすこし長くなってしまいましたが、ではその「焙煎」という作業に必要な道具「焙煎機」について。

焙煎機なくして焙煎豆は作れません。要するに「煎るための道具」です。

シンプルなもので言えば20gほどの容量の「ゴマ煎り器」も焙煎する道具であり、何十kgも一度に焙煎できる大型の機械も焙煎機です。

ご家庭でゴマをゴマ煎りで煎られたことがある方や、ポップコーンを煎られたことのある方などは少なからず焙煎士という仕事の片鱗を自ら体験したことがあり、ある意味皆さんが焙煎士なのです。

その中でもプロの焙煎士が使用する「煎るための道具」に焦点を当てましょう。

 

尚、ここでは焙煎機ごとのに一般的に「長所」と呼ばれる面を重点的にお話しさせて頂きます。

また、自分の焙煎士たるノウハウ・こだわりに関わる部分は省いており、あくまで基礎的なことを中心に簡単な言葉を用いて解説いたします。

読んでも何を書いているのか、素人の方があまりにわかりにくい表現法が焙煎機に絡む内容に沢山存在するためでもあります。

また、より焙煎機ごとに細かい長所・短所は存在しますが、短所を述べるべき場ではないという個人的な想いから省くことにしています。

より詳細をお知りになりたい方は、ぜひお店のほうへ足をお運びくださいませ。

 

コーヒー焙煎機の種類①直火式コーヒー焙煎機

一つ目は「直火式」読んで字のごとく、直火で豆をあぶるという熱の加え方をする焙煎機です。

いわゆる「ザル」で豆を煎る場合もこの直火式となります。

直火式焙煎機は焙煎機の中のドラムがパンチングメッシュになっており、そのドラムを下部から火であぶるような構造のものが主流です。

なにより直火式焙煎機の良さを語る上で外せないのは「豆一粒一粒から出る味の要素の絶対量が多い」という事。

これは言い変えるなら「しっかりした味」が欲しい場合に有効となる焙煎方法です。

直火式でしか出せないであろう「甘み」「深み」「重み」というような要素が存在するように思います。

直火式焙煎機では豆の水分を抜く作業や浅煎りの焙煎には非常に神経質な一面があるため、浅煎りよりも「中~深煎りに向いた特性」であるように感じています。

味が明確に焼き方によって変化を付けることができるのも良さであり、店ごとの特徴やこだわりを表現しやすいのも直火式焙煎機の特徴ではないでしょうか。

 

コーヒー焙煎機の種類②熱風式コーヒー焙煎機

対極にあぶるような熱の入れ方ではなく、間接的に熱源を焙煎スペースの外部に置き、熱源から生じた熱風で豆に熱を加える方式の焙煎機です。

こちらは短時間から長時間まであらゆる焙煎方法に適し、浅煎りの焙煎にとりわけ有効であり、比較的豆の焼き上がりが綺麗なのも特徴です。

昨今のスペシャルティコーヒーブームの時代では主流になりつつあります。

また浅煎りでの酸味特性を引き出すことに長けていたり、あらゆる焙煎度での焼き上がりが綺麗な豆に仕上がるという利点もあります。

焙煎時における「煙」が豆に纏う時間が少ないために、いわゆるスモーキーなフレーバー(燻した風味)が出にくいのも特徴です。

概ね「スッキリ」という言葉や「酸味」という言葉に対して味創りの方向を向けておられる方には熱風式焙煎機を取り入れて居られる方が多くみられます。

 

コーヒー焙煎機の種類③半熱風式コーヒー焙煎機

最後に半熱風、これはよく「直火式と熱風の間」という表現がなされていますが、個人的には全く別のものだと考えています。

「両焙煎機の中間的な味」が出せるのではなく「半熱風でしか出せない味や特徴」も当然あります。

半熱風焙煎機は直火式焙煎機のドラムにパンチングメッシュが施されていないドラムを使用したものが主流です。

つまり、フライパンでゴマを煎るのに似ています。

豆に面で熱を加えることによる伝導熱が最も効率的に豆に伝わる方式のため、焙煎の幅(熱量のコントロール)を割と自在に操ることができるのも特徴です。

現在は国産・海外産の焙煎機でも多く採用されている方式です。

当店、喫茶イレブンで使用しているのもこの半熱風焙煎機という方式をとったものです。

私の焙煎で目指す味というものが一番半熱風焙煎機とフィットしただけでなく、半熱風の熱コントロールの幅広さを活用し、極限まで水分量を減らすことによる「えぐみ」「生臭み」を無くした焙煎豆を創ることが容易であること。

また、焙煎中の操作次第で「直火式の(ような)味わい」「熱風式の(ような)味わい」をある程度創り出すことができると考えているからです。

また、卸売のお仕事をメインとしてコーヒー豆と関わっているために「日持ち」という課題と向き合った際に、半熱風式焙煎機を上手に使う程に豆の味わいのピークまでの日数・そこから徐々に劣化していくスピードまでも焙煎である程度コントロールが可能である面に助かっています。

もちろん突き詰めていけばどの焙煎機でも可能だと思います。自分が使用してきた中では半熱風式が自分の要求に従順ではないかと感じています。

焙煎後1カ月経過してから抽出しても、味にまだまだ魅力を色濃く残し、酸っぱくならず、冷めてもおいしいコーヒー。

言葉では理想を簡単に表現できますが簡単ではありません。

ただ、それを具現化することは可能であり、実際に喫茶イレブンのコーヒー豆が「日持ちする」「味が落ちるまでの期間が異様に長い」と卸先さま等で頻繁にご評価いただくのは、半熱風を適切に操作できている結果と考えます。

 

ローストとは?コーヒーの焙煎度合いによる名前の違い

次に焙煎度による味わいの変化について。

これはあらゆる焙煎機の特性によってかなり差異が生じることですのであくまで浅くなる、または深くなる方が、こういう傾向にある、という程度に留めてお考えください。

 

コーヒー豆は生豆の段階である程度の浅煎り・深煎りに「向いている・向いていない」が存在すると考えます。

よって、浅煎り(or深煎り)に向いていない豆を浅煎り(or深煎り)に焼いてもその豆の良さを最大限に引き出し切れない事もあり、各々の豆が持っている「適正焙煎度の幅」の中で上手に良さを引き出すことが重要ではないかと考えます。

浅煎りにしたから酸っぱい、深煎りにしたから苦い、という単純な味の出方をするわけでもなく、その豆にとっての浅煎り・深煎りが存在する。

よって、これからご紹介する焙煎度による名前の違いは、あくまで色味での「こういう感じです」という指標に過ぎず、それが豆の味に直接的に関わることでは無いと思って頂けたらと思います。

 

ライトロースト(Light roast)

淡い褐色になったばかりで、まだ豆の水分も抜け切れていないことも。

味わいとしては酸を強く感じ、苦味はまだあらわれません。

豆そのものに水分含量が低い豆はライト・シナモンローストでも綺麗に焙煎することができます。

 

シナモンロースト(Cinnamon roast)

ほんのりと褐色が深みを増していますが、まだ豆から苦味を感じるほどではなく、やはり酸を強く感じます。

「渋み」のようなものはライト・シナモンでは残る場合があります。

 

ミディアムロースト(Medium roast)

黄土色から茶色の境、ミディアムローストまでを一般的に「浅煎り」の範囲と捉えることが多いです。

豆の甘みが徐々に顔をだしはじめ、丁寧な水分が抜かれた焙煎豆であれば酸と甘みのバランスがとれてきます。

近年ではエチオピアのコーヒーがミディアム~ハイローストで焙煎されているのをよく見かけます。

 

ハイロースト(High roast)

ハイ・シティローストは中煎り、と言われる焙煎度。

ハイローストではより甘みに味わいが傾倒していき、酸味・甘味と共に苦味やコクも顔を出してきます。

中米のナチュラル等に向いている焙煎度ではないでしょうか。

 

シティロースト(City roast)

酸味が姿を薄くしていき、豆の甘み・酸・苦味のバランスが両立された焙煎度と言えます。

酸味の強い性格の生豆では苦味がまだ主張せず、シティローストでも十分に酸を楽しむことが出来ます。

ブラジルやコロンビアを中心とした中南米系の豆にフィットした焙煎度だと考えます。

 

フルシティロースト(Fullcity roast)

いわゆる中深煎り。フルシティでは豆の味わいが甘み・苦味を中心に引き出されます。

酸味特性の強い生豆の場合はフルシティあたりが甘味と酸のバランスが取れます。

アフリカ系(ケニア等)でよく見られる焙煎度です。

 

フレンチロースト(French roast)

フレンチとイタリアンは深煎り。豆の色はこげ茶色~黒い色に近付いていきます。

苦味は当然強くなっていきますが抽出温度次第でいくらでも角の取れた苦味を表現できるため、深煎りに耐性がある豆を使用すれば美味しく焼くことができます。

用途は限られますが、カフェチェーン店ではフレンチローストのコーヒー豆をエスプレッソに使用しているケースが多く見られます。

深煎りに適した豆と抽出環境があれば、使いやすい深煎りの焙煎度だと考えます。

 

イタリアンロースト(Italian roast)

見た目はほぼ真っ黒、少々豆の表面に油が浮くほどの焙煎度です。

用途がかなり限定されますが、イタリアンローストでしか感じないその豆の苦味特性もあり、豆の産地特性を残す事も可能です。

ブレンドでアクセントとして配合するような使い方では重宝する焙煎度です。

 

※※※

主に上記の8つの焙煎度で焼き分けをしますが、これも更に細かく分けてプロの焙煎士たちは豆と向き合っています。

例えば同じフルシティローストの中でも、5秒・10秒違えば、味わいは変化します。

あるいは、フルシティローストの色まで 豆を持って行くまでの熱の入れ方ひとつで、全く同じ色に焼いた豆でも、全く違った味に仕上げることも可能なのです。

そんな中で「つくりたい味」「出したい味の要素」「こだわり」を全て焙煎豆というちいさな一粒一粒に表現しなければなりません。

針の穴を通すような煎り止めのタイミングを見極める瞬間、あらゆる焙煎士たちが1日の仕事の中で集中力を研ぎ澄ましています。

焙煎は豆との対話です。見た目・におい・音など、豆が発する全てとやりとりし、豆の言葉を自分の手ひとつひとつの操作に変換し 豆の要求に応える作業こそ焙煎ではないでしょうか。

 

「こだわり」について

このような作業の中で自分が主眼に置くのは、概ね先述の通り「豆との対話」が出来ていることにあります。

あらゆる豆は違った国の言葉で、違ったニュアンスで、自分に「どう焼かれたいのか」を伝えてきます。

豆の声を聞き取ることができ、その豆が焼かれたい焼き方の中で、自分のこだわりと創りたい味を重ねていく。

 

正直なところ私は世の中のコーヒー店で「その豆、本当はもっとおいしくきれいに焼かれたかったんじゃないか?」という疑問を感じる豆を目に・口にする事も多く、その度に「豆の声」に耳を傾けることができる焙煎士で在り続けねばと強く感じさせられています。

どれだけ高級で高品質な生豆を使用していても、焙煎が不適切であれば、おいしいには到底たどり着けないコーヒーが出来上がります。

反面、どれだけ安価な一般グレードの生豆を使用していても、丁寧に豆の声を聴き焙煎すれば、見違えるほどおいしいコーヒーになるのです。

 

あらゆる細かい説明や、豆の名前や名誉を表記せねば良さがわからない焙煎豆よりも、飲んですぐ「わかりやすいおいしさ」を一般の消費者に理解して頂けるような焙煎豆こそ、広く知れ渡り「おいしいもの」として認知されていくべきではないかと常々考えています。

焙煎の細かいノウハウやこだわりを説明し伝えることは二の次に、どなたが飲まれても「おいしい」と言って下さる焙煎豆を創り続ける。

その水面下で人知れず、より高品質・安心・安全で味わいの良い焙煎豆を創る研究を焙煎士が続けていればいいのではと。

こちらから言葉で表現し伝えるものではなく、焙煎豆の味から感じ取ってくださるなにか、それこそ「こだわり」ではないかと思います。

 

作業としてやっていることは「煎る」の一言ですが、私たちプロの焙煎士は煎るという作業に心血を注ぎ、日々研究と努力を重ねて、その仕事に携わる限り理想を追い求めている、ひとりひとりが職人なのです。

焙煎士が乱立する世の中で、時代の一歩先、二歩先に生き残るために全ての焙煎士が切磋琢磨し合っています。

全ての焙煎士が各々にこだわりを持ち、豆に自分を投影し、自分の味を創ります。

消費者の皆さんの好みもどんどん多様化していくかもしれません。

そんな中で「この焙煎士の焼いた豆が好みだ」と思えるような焙煎士に出逢ったら幸せですよね。

そしてまだまだ奥が深い焙煎の世界、もっと美味しく焙煎できるのではないか?と焙煎士たちは考え、更なる高みを目指し続けます。

◆この記事を書いた人◆
珈琲焙煎士 天白隆洋 (喫茶イレブン・オーナー)
〒630-0244 奈良県生駒市東松ヶ丘2-14-101
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